知床沈没船引き上げは必要?引き上げ理由は?かかる費用は?

引き上げられるはずだった知床観光船が、一瞬にしてまさかのさらに深い182メートルの海底に沈んでしまいました。しかも作業台船舶「海進」の作業員が吊り下げ用機材にかかる荷重が軽くなっていることに気づき発覚するという驚きの事態となってしまいました。

今回は再引き上げにかかる費用とそれを負担するのは誰か?について調べてみました。

なぜ船体を引き上げるのか?

今回の場合、事故原因を探るためが1番の要因です

船体は唯一の事故原因究明のための物証なのです

海上保安庁は業務上過失致死などの容疑で捜査を続けています。引き上げが難航すると、操作が行き詰まる可能性があり、運行会社「知床遊覧船」の桂田社長の刑事責任を問うための証拠や、事故原因の特定ができる証拠が必要となり、そのためには船体を確認することが不可欠なのです。

一般に船舶が沈没した場合、海上保安庁が所有者に引き上げを命じ、民間サルベージ船が委託を受けて引き上げることが多いと言います。

ただし、引き上げ自体は船主の義務ではありません。

今回の場合、船舶引き上げは事故原因追求のためであり、船主の義務ではないことから、費用負担は国が持つことが濃厚となっています。

事故原因の追求のための船舶引き上げであっても、多くの人命が失われた今回の事故に、公費が使用されることは納得できますが、所有者にその義務の一旦もないことは少し疑問に思うところです。

船体引き上げの費用は誰が負担?

そもそも船主には引き上げの義務がなく、今回の引き上げ作業を全て公費で行っています。行方不明者の捜索や原因追求が要因で、海上保安庁は引き上げられた船体の状況を詳しく確認し、業務上過失致死容疑などでの捜査を本格化させる予定です。

再引き上げ作業でいくらかかる?誰が負担?

国が調査と捜索費として10億円以上の公費を使用しているようです

その内訳は、調査・捜索費8億7700万円、その他に国が専門業者と1億4000万円で契約しているようです。

海上保安庁は、海難救助と海洋工事を専門とする民間企業「日本サルヴェージ」と水中カメラや潜水士などによる行方不明者の捜索について契約を結びました。飽和潜水という潜水士があらかじめ加圧された特殊な部屋に入って体を奈良市、部屋ごと海中に下す方法を採用しているようです。これらの捜索費用に8億7700万円が計上されるようです。

以前潜水士の加圧システムを見学したことがあります、海底では大変な水圧があり、長時間の作業はもちろんできず、さらにはその水圧から、突然地上の水圧がない状態に上がることは命の危険があるため、特殊な部屋の準備が必要でした。潜水士さんは作業前後で体を水圧に耐えられるように慣らしていく時間が必要で、引き上げ作業といってもその準備に莫大な時間がかかることは容易に想像できます。

再引き上げの契約はどうなっているのでしょう?

第一管区海上保安部本部によると、「契約では引き上げから陸揚げまで行う内容で契約がされています。契約が履行されていないことから、事業者とは今回の再度の引き上げにかかる費用は発生しないという旨を確認しています」

現状では、この引き上げを行った事業者が再引き上げの費用を負担する可能性が高いようです。

再引き上げまでの経緯

KAZU1は一旦海面付近近くまで吊り上げられたものの、24日曳航中にベルトが切れて、引き上げ当初よりさらに深い182メートルの海底地点に落下してしまいました。

事故の重大さを顧みると、細心の注意が求められるのに、なぜスリングが切れるほどの潮の流れが速かったにもかかわらず進んだのか? またより強いスリングを次回はしようするなら、なぜ最初から強いタイプを使用しなかったのか、疑問がのこるとこですね。

当初からKAZU1は建造から40年も経つ古い船であり、さらに過去に何度か事故を起こして修理もしている経緯から、引き上げ作業は慎重に行う必要があるとされていました。

日本サルヴェージは25日、KAZU1を再度釣り上げるため、スリングと呼ばれるナイロン性のベルトを船体に取り付け、26日に海面に浮き上がらせる作業が始まりました。この後引き上げを行う船体がいかりを下すことができる浅い海域まで移動して、その後クレーンで引き上げて船上にKAZU1を乗せて、27日にも網走港に入港する予定です。

船内外には事故の証拠となる物資が多数のこされていると思われます。今回の落下による破損が著しいものではなく、無事に引き上げられた際に証拠が確認できる状態であるよう祈るばかりです。

船舶保険は適用なるか?

加入義務になっている船客障害賠償責任保険では、船骸撤去は含まれていません。ただし「法令に基づき撤去の命令等」があれば保険対象になるようですが、今回は水深120mの海底のため、他の漁船の航行の妨げにはならず、環境に重大な影響を与えているわけでもない、よって引き上げ作業に対する保険の使用は難しいと思われます。

まとめ

引き上げ業は民間会社が国から委託されて行い、その費用は10億円以上にのぼるようです。

公費を使った引き上げの初回は落下してしまう失態でしたが、次回は絶対に失敗を繰り返さないとの意識がおそらく引き上げを請け負った業者には強くあると感じます。

まずは事故当時の状態を保ったまま、船体が無事に引き上げられるように祈るばかりです。

読んでいただきありがとうございました。